メタン発酵(嫌気性処理)・管理の要点、ポイント、コツ等(PAGE‐3)

 

このPAGEの目次

  4、栄養(塩)の問題
    4-4、有機栄養剤について
  5、温度管理のこと
  6、攪拌について


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4、栄養(塩)の問題

4-4、有機栄養剤について

 菌の培養などをやったことがある人ならご存知だと思いますが、菌を培養するとき
には寒天培地に無機塩の他、ペプトン、精製肉汁などアミノ酸、ビタミン等を豊富に
含む有機栄養剤を添加します。これは菌の増殖を加速するためです。

 メタン発酵(嫌気性処理)の場合もこの有機栄養剤は非常に有効です。と言って
も、研究室で使うような有機栄養剤は高価で使えません。発酵工業の補助栄養剤にも
使われる、コーンスティープリカー、核酸副生物、アミノ酸副生物、酵母エキス等な
どならコスト的にもリーズナブルでしょう。窒素換算で必要量の1/101/5程度添加す
るとメタン菌の活性が著しく増加します。

 化学工場の有機性廃水等をメタン発酵するときにはこのような有機栄養剤も定常
的に添加する必要があります。

 先に述べた無機塩は遅効性ですが、これらの有機栄養剤は即効性です。何らかの理
由でメタン菌が失活しそうな時に、有機栄養剤を添加すると劇的に回復することがあ
ります。メタン菌は一度失活したらほとんど回復は望めません
(この辺が活性汚泥と
著しく異なります)
ので、このような最後の手段も覚えておいてもらうとよいでしょ
う。

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5、温度管理のこと


 メタン発酵(嫌気性処理)には中温発酵と高温発酵があるのはご存知で
しょう。中温発酵は37℃が、高温発酵は52℃が最適温度とされています。
37℃と52℃に2山の活性のピークがあるグラフがどの教科書にも載ってい
ます。

 しかし実際に実験してみるとあの2山のピークはそれほどはっきりしま
せん。たとえば中温のメタン菌を0.5/日程度の割合で徐々に加温してい
くと53℃くらいまでは直線的に活性が増してゆきます。(さすがに55℃を
超えると不可逆的に活性が落ちますが)。これはいわゆる馴養とは違っ
て、中温メタン菌の中には高温に耐性のあるメタン菌もいて、徐々に温度
を上げれば高温にも耐性のあるメタン菌が増殖していくからだと見ていま
す。

 それだけの実験事実で中温発酵、高温発酵の定義を否定するつもりはあ
りませんが、45℃に管理されているメタン発酵槽もあるくらいで、あまり
厳密に中温、高温を分ける必要はないのではないかと考えています。

 ただ、中温発酵、高温発酵にはそれぞれの長短があります。
生物反応では一般的なことですが、メタン菌も温度が10℃ごとにその活性
がほぼ倍変化します。したがって中温発酵と高温発酵ではその有機物分解
速度(メタンガス生成速度)は23倍違います。発酵槽容積当たりの負荷
率という意味では高温発酵が断然有利(設備が小さくできる)ということ
になります。しかし高温になるほど耐性菌の種類は減ってきますし、アン
モニアガスや硫化水素ガスの毒性も強くなります。過負荷による有機酸の
蓄積に対してもセンシティブになってきます。処理の安定性という意味で
は中温の方が断然安定しています。

 また排水が高温でない限り高温発酵では排水を加温しなければなりませ
んから、エネルギー回収という意味でも中温発酵が有利です。

後に述べるUASBやEGSB(グラニュール型メタン発酵)では多種
類の菌の共生を前提としているためか、今のところ中温発酵に限られてい
ます。

数多くの高温発酵、中温発酵を手掛けた経験からすると、高温発酵はよ
ほど条件が良い場合(発酵廃液などで、排水温度が高い場合など)に限定
すべきものというのが今の私の見解です。

 と、言いますのは、メタン発酵の主たる役割はエネルギーの回収以前に
排水処理や生ごみの処理であります。廃棄物の処理というのは原料を選べ
ないというのが原則です。メタン発酵のために条件を整えるというのは限
度があります。それにも増して現場の都合で処理を中断できない(中断し
たら工場が止まる)宿命です。

 活性汚泥では、なだめすかしながらでも処理を継続できますが、これま
で述べてきましたように、メタン菌は一度失活したら、ほとんど復活不可
能です。ですからまずは処理の安定ということに重点を置くべきでしょ
う。処理の安定という意味では断然中温が勝ります。

さて、中温発酵は処理が安定していると述べましたが、温度管理がどう
でもいいということにはなりません。1日35℃以上も変動するのは好ま
しくありません。温度範囲はあまり中温という範囲にこだわる必要はなさ
そうなことは前述したとおりです。

 ただしUASB、EGSB型のメタン発酵では多種類の中温菌の共生が
前提となっており、40℃を超えると、グラニュールがもろくなりますか
ら、38℃以下に管理すべきでしょう。

 高温発酵では112度以上変動しない方がよいでしょう。 55℃以上は
厳禁です。

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6、攪拌について


 攪拌の問題はもっと前の方で論じるべき重要な問題ですが、管理の問題
というよりは設計の問題ですので、後半に持ってきました。

 メタン菌はその周りに排水(有機物)がなければ有機物の分解を始めま
せんから、排水と汚泥(メタン菌)とは均一に攪拌されていなければなり
ません。

 ただし反応速度が化学反応のように早いわけでないので、強い撹拌は必
要ありません。それよりも原水と汚泥(メタン菌)とのゆるくても均一な
撹拌が必要です。メタン菌にもわずかに凝集性があるので、汚泥分離槽を
持たないメタン発酵槽の場合、発酵槽内の汚泥(メタン菌)濃度維持のた
めにもあまり強い撹拌は勧められません。

 

現状多く見られるのは、発酵槽中にドラフトチューブを設け、ドラフト
チューブ内にスクリュー式のポンプを設けるもの、ガスリフトによるもの、
大直径の撹拌機を設けるもの等が主流ですが、いずれも、先ほどのべた
目的のためには部分的撹拌強度が強すぎる傾向があります、その割には
全体に攪拌が及ばず汚泥(メタン菌)が底部に堆積しがちです。もっとメ
タン発酵に適した撹拌システムの開発が待たれます。


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