メタン発酵(嫌気性処理)・管理の要点、ポイント、コツ等(PAGE‐2)

 

このPAGEの目次

  4、栄養(塩)の問題
  4-1、微量無機塩(金属)について
  4-2、マクロな栄養塩(窒素N、燐P)について
  4-3、マクロな栄養塩(硫黄S)について

 

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4、栄養(塩)の問題

 
 栄養(塩)の問題は負荷管理にも勝るとも劣らない もう一つのメタン醗酵(嫌気性
処理)の要点、ポイント
です。一般に活性汚泥では栄養(塩)のことがあまり問題に
なることが少ないから、メタン醗酵でもつい軽覗されがちなのだと思います。しかし
実際は活性汚泥とはかなり状況が違うのだということを知ってもらいたいのです。

 

メタン発酵をつかさどるメタン菌は古細菌と言い、地球創世記から存在する菌で、
地球上のどこにも存在します。しかし、その菌種は非常に少なく正確に同定されてい
る菌種は百にも満たない程度です。 活性汚泥を構成する好気性菌や通性嫌気性菌群
とは比較にならないくらい菌の種類が少なく、しかも特異な栄養要求をします。

 活性汚泥では環境が悪くても(貧栄養でも)その環境に見合った菌群が発生してく
るので、少なくとも有機物の分解が進まなくなるということは稀です(沈降性、脱水
性などには影響が出ることはありますが)。工場排水の元となる水道水、河川水、井
水には十分ではないまでも必要最小限の栄養塩は存在すると言う前提でよかったので
す。

 しかしメタン菌に対してはそう言う前提は通用しないと考えていただいたほうがよ
いと思います。先にも述べましたが、つい20年ほど前まではメタン発酵が適用できる
廃水はごくごく限られていました。1980年代から90年代にかけて、メタン菌の栄養要
求が精力的に研究され、その成果によって、メタン発酵の適用範囲が急激に広がって
きた
のです。

 今やメタン発酵はあたりまえの技術として定着してきましたが、逆に、この辺の歴
史的事実に対する認識がメーカで設計にあたる人達にも薄くなってきているため、ユ
ーザーにきちんと情報が伝えられなくなっているような気がします。

 メタン発酵が思わしくないとき、栄養(塩)の条件が満たされているかチェックし
てみてください。以前は問題なかったと言うのは必ずしも問題がないことにはなりま
せん。微量無機塩などはなくても数ヶ月影響は出ないこともあり、逆に添加したら明
日から効くと言うものでもありませんから。

  以下窒素N、燐P、硫黄Sのようなマクロの栄養塩とミクロな無機塩に分けて議論
します。
まず要点という意味で、
軽視されがちな微量無機塩から論じます。

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4-1、微量無機塩について

 

1980年代から90年代にかけて、メタン菌の栄養要求が精力的に研究されてきたこと
は先に述べました。この時代の研究で、メタン菌が要求する無機塩(金属)の種類は
ほぼ出尽くしていると思われます。

 

 例えば、スピース(バンダービルト大)は多くの研究者が発表したメタン菌増殖促
進に必要な無機塩とその量をまとめて報告しています。0.05mg/l以上 必要な無機塩
(金属)としては
カルシウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、コバルト、カリウム、
ナトリウム、
亜鉛、セレン、タングステン、モリブデン などが挙げられています。
別のレポートには、さらに微量ですが 銅、マンガン、アルミニウム等の報告もあり
ます。


 上記の数値には、レポートによって大きなばらつきがあります。それは研究者の
扱った菌種や基質の違いからくるものと思われます。ほとんどのデータは研究室内に
おける回分試験から得られていますので、実際の現場での最少必要量はそれよりかな
り少ない数値になると思われます。

 

このような無機塩(金属)をすべて有している原料はほとんどないこと、日本の工
業用水が軟水で鉱物質の含量が少ないこと等を考慮すると、
微量無機塩(金属)は
工場排水のメタン発酵の管理の最大の要点、ポイント
と言えると思います。

 
 原料または原水中にこれらの微量無機塩が存在しない、または不足していると考え
られるときは、これらの無機塩を添加することを薦めます。その形は塩化物など水に
溶ける形の化合物であれば何でもよろしい。

 
このような調合は実験質的には難しくはありませんが、日常管理の中ではわずらわ
しいかもしれません。そのような場合はメタン発酵補助栄養剤として調合されたもの
を利用されるのが現実的かもしれません。微量無機塩は必要量も少なく、コスト負担
も大きなものではないはずです。

 微量無機塩(金属)についてはもう一言付け加えます。それは微量無機塩の添加
位置についてです。有機物が低分子化して有機酸になる過程でキレート性を持つ化合
物(例えばクエン酸等)を経る可能性があります。これらの有機物は金属とキレー
ト化合することによりメタン菌が金属を利用しにくなる可能性があると言われてい
ます。したがって微量無機塩はメタン発酵槽直前に添加するのがベターです。調整槽
や酸発酵槽に入れても同じことのようですが、添加量も少ない微量無機塩ですので、
少しでも有効なポイントに入れたいものです。

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4-2、マクロな栄養塩(窒素N、燐P)について


 窒素N、燐P についてはどの教科書に出ていますので、詳しくは書きませんが、
その必要量はおおよそ、 
CODcr:N:P =(3001000):5:1 と言われて
います。分解有機物あたりの菌体合成量が活性汚泥に比べて 1/51/10 ですから、
N、P の必要量もそのくらいなのでしょう。

 

 ここでは、盲点のようなことについて一言触れておきましょう。
原水中のN、Pを分析して十分だと思っても、実際には不足している場合がよくあり
ます。それは原水中のNはケルダールNとして、PはトータルPとして分析すること
が多いからです。そこで分析されたN、Pがすべてが微生物に利用可能とは限りませ
ん。色度成分に含まれるNや、固形分に含まれるPなどを微生物は利用できないこと
もあります。 N、Pは足りているはずなのに不調というときは 発酵槽内のろ液の
NH4-N(アンモニア態N)、PO4-P(燐酸態P)を測ってみるといいでしょう。

  発酵槽内のろ液中に、Nは1~10mg/l、Pは0.52mg/l くらい残っていなけれ
ば、微生物が利用できるN、Pが不足していることを疑うべきでしょう。メタン発酵
のための理想的環境という意味では、もう少し多く残っているべきという見解もあり
ますが、放流水基準との兼ね合いでは、過剰の添加は避けたいところです。

 窒素の過剰は別の問題を起こします。メタン発酵槽内では蛋白質やアミノ酸はアン
モニア性窒素にまで分解されます。このアンモニアがメタン発酵を阻害します。これ
については「2、適正PH」を参照してください。


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4-3、マクロな栄養塩(硫黄S)について

  メタン発酵に置ける 硫黄S には功と罪があり、活性汚泥の管理とは違った視点が
要ります。

メタン菌は栄養塩としてN、PについでS化合物を多く要求します。この比率は一般
的に活性汚泥のような
好気性菌よりかなり高いと言われています。
それは菌体構成物質中に占めるSの量が多いから(メタン菌の経験的化学組成は 
(C572NP0.060.1 --- スピース)でもありますが、メタン醗酵槽の酸化還元
電位を下げるのに有効だからでもあります。

 原水中に必要なS化合物についての報告は非常にばらついており0.00110 mg/
と報告されています。その程度以下であればメタン醗酵にはS化合物は積極的に必要
な元素と考えられえいます。

 ただしS化合物は菌体合成に使われる以外の大部分はメタン醗酵槽中で硫化水素に
還元されます。この硫化水素はある濃度以上でメタン醗酵を阻害します。したがって
流入水中のS化合物はある濃度以下にコントロールする必要があります。硫化水素が
阻害濃度以下であってもガス中の硫化水素濃度が上昇して、ガス再利用上の障害にな
ります。

 この硫化水素(液中)の阻害濃度に関する報告も非常にばらついていますが、おお
よそ100mg/l以下であることが望ましいと思われます。またこの硫化水素はpHによ
っても毒性が違うと言われています。(H2Sは毒性が強くHSは毒性があまり強く
ない。) これについては「2、適正PH」の項を参照してください。

 S過剰による別の問題として、微量金属塩がSに固定されてメタン菌に利用されに
くくなることが指摘されています。ただしこのことについてはあまり定量的な文献が
なくどの程度以上が問題なのか判然としません。S化合物の流入割合が高い排水の場
合微量金属塩の不足もありうることを念頭に置かなければならないでしょう。



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