メタン発酵(嫌気性処理)・管理の要点、ポイント、コツ等(PAGE‐6)

このPAGEの目次


 8、UASB、EGSBのトラブルの諸相

   8-1、管理項目の不適よるトラブル事例

   8-2、有機性SS分過剰流入によるグラニュールの浮上、流出

   8-3、グラニュールゾーン高さの管理不足によるトラブル

   8-4、原水分散投入の不適による処理未達

   8-5、3相分離セットラー閉塞による処理未達


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8、UASB、EGSBのトラブルの諸相


  UASB、EGSBに限りませんが、嫌気性処理では酸素の混入を防ぐために、水槽は厳

密に密閉構造になっています。言い換えればブラックボックスになっています。

外からは中を窺うことはほとんどできません。好気性処理であれば基本オープンですの

で、不具合があれば、何かしら様子が変わり、「おかしいな」と気付くことが出来ます。


しかし嫌気性処理では外見的な変化に気付くことは、あまりありません。データに少々異

常が出ていても、かなり専門的な目で、総合的に見ないと、それが変動幅の中のことか

異常なことかは判断がつきません。

つい異常を見逃してしまって、手遅れになるということが起きます。これは嫌気性処理の

大きな盲点です。


  UASB,EGSBは、さらにグラニュール菌を生育させることにより、非常大きな負荷を実

現していますので、それが原因であるか、結果であるかは別にして、UASB,EGSBの不

調には必ず、グラニュールの崩壊、又は浮上による流出現象を伴うのが特色です。

その結果グラニュールが流出してしまい、処理も全くできなくなるとということが頻繁に起

きています。


  ここでは、水量、水質、温度、pHと言った嫌気性処理に一般的な管理ポイントは横に

おいて、UASB,EGSBにありがちな、「管理の盲点」のようなことが原因でトラブルになる

事例についてお話したいと思います。貴工場のUASB,EGSBの管理の参考にしていた

だければと思います。




8-1、管理項目の不適によるトラブル事例


 このHP記事の 1ページ 「3、メタン発酵の負荷管理の要点」でも述べていますように

嫌気処理においては、有機物の負荷管理は非常に重要です。

メタン発酵の設備は通常、有機物の負荷量をCODcrで表し、発酵槽容積当たりの

CODcr負荷率や発酵槽内の汚泥(メタン菌)当たりのCODcr負荷率から、発酵槽容積を

算定します。そのため現場でも、容積当たりCODcr負荷率や汚泥当たりCODcr負荷率を

基準にして管理しておられる所が多いです。これは一つの目安ですが、3項「メタン発酵

の管理の要点」で述べましたように、それだけでは非常に危険なのです。


 先の「負荷管理の要点」でも、それでは発酵槽内の状況把握が遅れるので、VFA(揮

発性脂肪酸)も併用して管理されることを推奨しています。

これはVFAが一定濃度以上発酵槽内に蓄積するとメタン発酵を阻害するようになるの

で、嫌気性処理については全般に推奨したいことなのですが、UASB、EGSB管理におい

ては更に重要な意味を持ちます。


 グラニュール菌を構成するmethanosaetaを優勢にするには、発酵槽内のVFA値を一定

濃度以下に保たなければならないということがあるからです。(7-1項参照)

所が、実際にはUASB,EGSBを運転されている現場でもVFAを測定しておられないお客

様が結構おられます。

VFAが蓄積しても、直ちにグラニュールが崩壊するという様なことではありません、した

がって直ちにメタン発酵が不調におちいるということもないからでしょう。

しかし、グラニュールの崩壊は徐々に進み、気がつかれたときは、グラニュールがほとん

どないか、失活していて、グラニュールを入れ替えるしか手が打てないような状況になっ

ておられる現場が少なくありません。


 VFAによる発酵槽管理は嫌気性処理においては非常に重要です。UASB,EGSBの管

においては必須事項だと思うのですが、設備を納入したメーカはそのことを、なぜ強調し

なかったのでしょうか?



8-2、有機性SS過剰流入によるグラニュールの浮上、流出


 UASBでもEGSBでもSSの流入には制限を設けています。UASBでは300~500 mg/l、

EGSBでは600~800 mg/lとする設備が多いようです。 しかしそのSS物質が有機物であ

るときにはそれ以下でもトラブルにつながることがあります。メタン菌が流入SSを核にグ

ラニュールを形成し、後にその有機物が分解してガスを発生し、グラニュールを浮上させ

たり、崩壊させたりするからです。

コーヒー粕や茶粕、果実種等、容易には分解しそうもないものでも、グラニュールに取り

込まれて長時間経過するとガス化して、浮上の原因になったりします。

「流入制限値内だから大丈夫」とも言えないケースがあるということを、意識して於いて

頂く必要があります。



8-3、グラニュールゾーンの高さ管理不足によるトラブル


 UASBでもEGSBでも発酵槽の内部ではグラニュールがゾーンを形成しています。

発酵槽の中には必要な量のグラニュールを保持しなければならないわけですから当然

ですが、ゾーンを形成させるのには別の狙いもあります。

UASB、EGSB型メタン発酵槽は撹拌機を備えていません。発酵槽底部に原水を均等に

分散導入し、 排水の上昇流と、発生するガスが上昇力により、グラニュールを流動化さ

せ、撹拌しています。 発酵槽底部への均等分散流入は必ずしも理想状態にはありませ

んし、時間経過とともに部分閉塞も起き、 ますます均等流入からは遠ざかります。

しかし、実際には流動するグラニュールのゾーン自体が水の均等分散の役割を補助し

てくれます。            

即ち、底部の1m程度のグラニュールはメタン発酵のためというより、水分散の役割が大

きいのです。


UASBでは2~4m、EGSBでは4~7m程度のゾーン高さに保つよう設計されていることが

多いです。


このグラニュールゾーン高さの管理が疎かになっているケースが少なくありません。

これは、発酵槽の内部がブラックボックスになっていて、外からは全く見えないことと、グ

ラニュールゾーン高さを測定するのが案外やっかいだからだろうと思います。


グラニュールゾーンの高さを測る方法は、サンプリング管による方法、透過光式の汚泥

界面計による方法、水中カメラを備えた界面計などによるのでしょうが、どの方法にも問

があって、現場的には容易ではないので、勢い測定頻度が減りがちになります。グラ

ニュールゾーン高さは、普通はそう急変するものではないということも、つい油断する理

由でもあると思いす。


しかし、グラニュールゾーン高さの管理はUASB、EGSB装置管理の大きなポイントです

ので、方法はどれでも構いませんから、1回/月程度は必ずゾーン高さの測定は実行し

てくだい。

それを補完する方法としては、イモフシリンダーを使って、毎日流出しているグラニュー

ル量を把握しておかれると良いでしょう。これは精度は高くないですが、非常に簡易で

数分で測定できすので、毎日測定しておられれば、それなりに精度は得られ、グラニュ

ール流出の急変にも気付くことができます。



8-4、原水分散投入の不適による処理未達


 UASB、EGSB型発酵槽では機械的撹拌装置は備えていません。(機械的撹拌では撹

拌力が強すぎてグラニュールを崩壊させてしまうからです。)

原水の底部への均等分散流入による上昇流と、発生ガスによる浮力とがグラニュール

を流動化させ、原水とメタン菌の接触を担保しています。


それにはグラニュールゾーン自体がその役割を補完しているということを前項で述べま

した。しかし、それにも限度があります。

均等流入には極めて不利な構造のものや、初期には均等分散出来ていても、数年後に

は閉塞によって、偏流入になってしまう構造の発酵槽が少なくありません。


発酵槽底部の偏った場所からだけ原水が流入すると、その部分だけに強い上昇流が生

じ、他方には強い下向流が生じます。グラニュールが流動層を形成していてこそ、原水と

グラニュール(メタン菌)が均等に接触し、高度な処理効率が得られるのであって、上記

ような撹拌状態の中では、グラニュールの流動層は形成されず、十分に原水とグラニュールの接触が得られません。従って処理効率も悪くなります。


発酵槽内部にグラニュールはあり、ガスも出ているが、何となく処理効率が悪いというよ

うなときは、原水の偏流入が起きていることを疑うべきでしょう。

この状態ではすぐにメタン発酵は止まりませんが、徐々にグラニュールの崩壊を招き、

長期には発酵停止に追い込まれます。



8-5、3相分離セットラ―閉塞による処理未達


 UASB、EGSB装置は発酵槽上部には通常、3相分離セットラー(ガス、処理水、グラニ

ュールの分離)が備えられています。このセットラーにも各社様々な工夫を凝らして、更

に高効率を目指すような構造になっています。

ただ複雑な構造物は問題を起こし易いです。グラニュールを構成するメタン菌は糊状物

質(ポリぺプチと言われている)を生成するので発酵槽内部の構造物に付着したり、沈

着したりしやすく、それが進むと閉塞が進み、3相分離セットラーとしては全く機能しない

どころか、短絡流により、グラニュールを一気に流出させてしまうようなことも起きます。


何度も同じことを言いますが、メタン発酵槽の中はブラックボックスになっていて、中の状

態は外からは窺い知れません。気がついた時にはグラニュールがほとんどなくなってい

たというような現場をいくつも見てきています。


 以 上


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「メタン発酵(嫌気性処理)・管理の要点、ポイント、コツ等」は出納正彬が担当しました。                                                


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タン発酵で長期にお困りのお客様へ

 

 上記にメタン発酵(嫌気性処理)・管理の要点、ポイント、コツ等を述べてきましたが、
現実に不具合のご相談を受けていると、お客さま自身ではなかなか問題点のポイント
がつかめず、長期に試行錯誤を繰り返した末にご相談に来られるお客様が多いです。

  特にUASB、EGSB型メタン発酵において、グルニュール菌の保持に苦労されている
お客様が少なくありません。グラニュール菌の保持に関わる要因は多く、バランスが崩
れると、原因の特定は困難なようです。

本文にも述べましたがメタン発酵というのは限界を越えると悪くなるばかりのことが
多く、あげく排水の全量を長期にわたって外部委託処理しなければならず、膨大な出
費を強いられるようなお客様が少なくないのが現実です。

メーカに相談しても、グラニュールの総入替えを勧められたり、新規設備の増設を勧
められたり、ということが多いようです。それもまた膨大の費用のかかること
になりす。

よほど重症になる前ならそんなことしなくても、必ず復活させられます。思い切って早
めにご相談いただくのが絶対に得策かと。

 

 

 

 また、メタン発酵(嫌気性処理)に限らず、排水処理でお困りの場合は、エムズの「排
水処理の
現場サポートサービス
もご検討ください。

 


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